欧州型作業道

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欧州型作業道

13/07/13

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岐阜県高山市清見町の夏厩(なつまや)という地区にある「欧州型作業道」。
施工したのは、たかやま林業・建設業協同組合(たかやま林建)様です。今回は、たかやま林業様、岐阜県飛騨農林事務所様の案内で、実際に現場を確認しながら解説をいただける貴重な機会となりました。

たかやま林建では、建設業ならではの林業・道づくりの新しい在り方を目指してドイツ・スイスの林業手法を取り入れた森林経営を進めています。
ドイツの道づくりは100年使える道であり、その為には排水が肝心であるとの事。その為の工夫として、横断勾配を縦断勾配より高く設けた屋根型路体によって水を路体の両側に流します。
山側の水は側溝を流れますが、排水升が短い間隔で設置されているので、大量の水が流れる事がありません。その為大きな枝や土砂が運ばれて詰まる事も無いそうです。

●排水升(暗渠)が短い間隔で設置ankyo.jpg
まず、沢を横断する部分では、「洗い越し」ではなくヒューム管を利用して両側から反対側が見えるように暗渠を設け、魚など水中生物が行き来出来るような工夫がなされてました。
日本では開渠が用いられる事が多いのですが、ドイツでは全て暗渠で作られているそうです。開渠の場合、その上で重機が展開できないため作業効率が落ちたり、通過するオペレーターの心理的な圧迫感があるからとの事。

●側溝の形は三角形
作業道は、山側の側溝の形を三角形にする事でメンテナンスは年に一度重機で浚うだけでよくなり、負担が軽減される上に道路が広く使えるメリットもあるとの事。
また、排出口にも石段を積んで勢いを削いで山に戻す工夫もあり、実際に前日に大量の雨が降ったものの、全く路体には影響が無かったとの事です。haisui.jpg

●将来木施業
岐阜県飛騨農林事務所では、将来木施業に取り組んでいます。将来木施業とは、最終的に生産する優良木となる候補を、㏊当たり80~100本(針葉樹の場合)ほど選木し、その木の成長の妨げとなる木を適期切っていく手法です。その他の低層木や将来木の樹冠に入ってこない木は基本的に触らないため、間伐時にかかるコストを抑えつつ、ある程度の太さを持つ間伐材で収益を見込めるという仕組みです。これにより多様な径級の木々を持つ森林が形成され、森林の安定性も維持できます。
このような手法が編み出された背景には、ヨーロッパの山林は風が強いという地域性があるということです。日本のように30~40%の間伐した場合、その強さに耐えられずに森林の様子が変わってしまうからだそうです。

高山市での欧州型作業道と将来木施業の取り組みは、試行錯誤を重ねながら、新しい形の林業経営を目指して行政・林業・建設業が一丸となって進めていました。作業道を実際に見て歩いた事は貴重な経験でありますが、この真剣さが最も大きな収穫だったと思います。
たかやま林業様、岐阜県飛騨農林事務所様に厚く御礼申し上げます。

ぜひ本場ヨーロッパの現場も訪問したいものです。

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